にほんご ちゃん

先生は違いを求められがち

N2文法 〜をとわず/〜にかかわらず

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N2文法 〜をとわず/〜にかかわらず

 

AをとわずB      :Aかどうかは問題ではなくB

AにかかわらずB:Aには関係なくB

 

とわず=問わず(不問)、かかわらず=関わらず(無関係)は漢字から推察できるんですが、上記説明や例文をみているとなんだか違いがよくわかりません。

 

比べてみましょう。


比較①

◯この試験は国籍をとわずだれでも受けることができる。

△この試験は国籍にかかわらずだれでも受けることができる。

→「にかかわらず」に少し違和感を感じます。でもまぁ、言うんじゃない?と流してしまいそうです。

比較②

×購入金額をとわ送料は一律800円となっております。

◯購入金額にかかわらず送料は一律800円となっております。

 →ここで「をとわず」を使うと違和感を感じます

 

比較③

◯ヨガは年齢をとわずだれでも楽しむことができる。

◯ヨガは年齢にかかわらずだれでも楽しむことができる。

→どちらも違和感ありません。

 

 

比べてみると、

をとわず」は「Aがどんな場合でもB、Aがなんでもあっても同じようにB」と言いたいときに使います。

また、「をとわず」はAに選択肢が明確な名詞がくることが多いです。性別(男・女)、天気(晴・曇・雨)、国籍(日本・アメリカ・トルコetc)、有無(あり・なし)。

比較②のように「購入金額をとわず」と明確な選択肢を提示しにくい語を使うと違和感があります。

 

にかかわらず」は、「Aには関係なくBはいつでも成立する」、また言いたいことは後件B。

「にかかわらず」はAの名詞について、選択肢が明確で無いものも使うことができます。距離(0〜♾)、金額(¥0〜♾)、大きさ(高さ?幅?奥行き?)など。

そして明確なものにも使うことができるので、この2つは比較③のように場合によっては置き換えが可能です。 

 

追加として、比較④

×実際に受ける受けないをとわず、申し込みはしておいたほうがいい。

○実際に受ける受けないにかかわらず、申し込みはしておいたほうがいい。

 

↑のように「VじVない」(行く行かない・読む読まない・泳げる泳げない)を言う場合は「にかかわらず」を使います。

 

意味がよく似ていて置き換え可能な場合もあるので、違いを求めがちな学生には、

「意味はよく似てるね。〜をとわず、はoption(選択肢)がクリアなもの、〜にかかわらず、は両方とVじVない。」と、意味の細かいニュアンス的な違いより、使う際のそれぞれの制限を明確にしてあげるといいかもしれません。

N3文法 〜のように/〜かのように

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N3文法 〜のように/〜かのように

 

AのようにB:AみたいなB

AかのようにB:AみたいなB

 

正直なところ、日本人としてそこまで明確な使い分けはないけど結構使っているこの文型。

教科書によりますがN3で登場、学生を混乱させます。

また教師が導入例文でミスすると学生の混乱を一層助長する注意が必要な文型です。

 

かくいう私も導入例文でミスをして学生を困らせました。

 

比較❶

○本物のダイヤモンドのように光っている

○本物のダイヤモンドかのように光っている

→どちらも違和感ありませんが、受ける印象が少し違います

 

比較❷

○まるで台風がきたような風が吹いている

○まるで台風がきたかのような風が吹いている。

→どちらも違和感はありません。

 

比較❸

△彼はその現場にいたように事件の話をした。

○彼はその現場にいたかのように事件の話をした。

→「ように」は違和感を感じます。

 

まとめると、この文型はとても似ていてチェンジがOK

比較❶や❷のように、「Aみたいに見える・感じる」という場合にはどちらを使っても違和感はありません。だたし、「〜かのよう」ではすこし曖昧な感じがあります。

 

比較❸をもう少し見てみましょう。

△彼はその現場にいたように事件の話をした。

○彼はその現場にいたかのように事件の話をした。

この文の場合、文中の「彼」はおそらく現場にはいません。本当はいなかったのに、という意味を含む場合「ように」を使うと少し違和感があります。

つまりAが「本当はそうではない」場合は「かのように」のほうがしっくりします。

 

ですが、試験で〜ように/〜かのようにを選ぶような問題はおそらくないでしょう。

 

ちがいを求めがちな学生に聞かれたら、

「2つともとてもよく似ていてチェンジができます。Aが似ているものの場合は〜のように、本当じゃない場合は〜かのように、がいいですね」と簡単に言いましょう。

 

 

 

N3 文法 〜に対して(対象)

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N3文法 〜に対して

 

N3で勉強する「〜に対して」。

比較の文型(私はなんでも食べるのに対して妹は好き嫌いが多い)はわかりやすいが、この行為・態度の対象の文型はかなりわかりにくいですね。

多くの本や解説でさらって「行為・態度・感情の向かう対象」を書いていますが、私たち日本人にはわかっても学生には????になりがちです。

 

さらに対象を「〜に」に置き換えることができるので、この文型を使うことができないものまで「に対して」を使ってしまい、学生を混乱させます。

 

説明を重ねれば重ねるほど、学生が混乱する文型です。

 

こんな感じでやってみました。

 

例文①

私は怒っています。 →だれに?    ◯◯さんに。

          →なにに?    govermentに。

          →なにに?    pollutionに。

 

私は〇〇さん怒っています。 →私は〇〇さんに対して怒っています。

私はgovernment怒っています。→私はgovernmentに対して怒っています。

私はpollution怒っています。 →私はpollitionに対して怒っています。

 

例文②

私は要求します。  →だれに?    社長に。

          →なにに?    市役所に。

 

私は社長に要求します。     →私は社長に対して要求します。

私は市役所要求します。    →私は市役所に対して要求します。

 

例文③

感謝します。    →だれに?    お世話になった先生に。

          →なにに?    日本の教育に。

          →なにに?    神様に。

お世話になった先生感謝します。→お世話になった先生に対して感謝します。

日本の教育感謝します。    →日本の教育に対して感謝します。

神様感謝します。       →神様に対して感謝します。

 

 この文型「〜に対して」は向かう先(相手)を示す「に」にチェンジできます。

ですが注意が必要です。

①行為(action):求める・質問する・反対する・賛成する・述べる など

②感情(feeling):怒る・感謝する など

③態度(atitude):きびしい・やさしい・言葉遣い など

 

①の行為の場合、二格をとるすべての動詞で使えるのはありません。

(OKな動詞、使うと違和感がある動詞を並べたらおおよその学生は感覚で掴んでくれるかと……。)

ありがちな誤用で、あげます・あいさつしますなどの対象の「に」まで「に対して」に変えてしまう誤用があります。

 ×妹にたいして本をあげます  ◯妹に本をあげます。

この文型は相手というより、話者(主語)のパワーの向かう先と考えるといいですね。

 

N3文法 〜に対して/反面/一方で

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N3文法 〜に対して/反面/一方で

 

Aに対してB:AとちがってB

A反面B:Aと反対にB

A一方でB:AとちがってB

 

よく似てますね。2つの動詞を並べるあたり、N4の「ながら」を相まって、違いを求める学生に聞かれがちです。

比較①

◯私は何でも食べるのに対して妹は好き嫌いが多い。

◯私は何でも食べる反面妹は好き嫌いが多い。

◯私は何でも食べる一方で妹は好き嫌いが多い。

→どれも違和感はありませんね。やや「一方で」に違うニュアンスを感じます。

比較②

×日本語を教えるに対してヒンディー語を習っている。

△日本語を教える反面ヒンディー語を習っている。

◯日本語を教える一方でヒンディー語を習っている。

→対しては違和感があります。「反面」は違和感はというよりは、少し強い表現に感じます。

 

 

比較③

◯彼女がピニアストであるのに対して彼女の姉は画家だ。

×彼女がピニアストである反面彼女の姉は画家だ。

◯彼女がピニアストである一方で彼女の姉は画家だ。

→「反面」には違和感があります。

 

比較④

×彼の気持ちを信じているのに対して疑ってしまう時もある。

◯彼の気持ちを信じている反面疑ってしまう時もある。

◯彼の気持ちを信じている一方で疑ってしまう時もある。

→「対して」は違和感があります。「反面」「一方で」は違和感はありませんが、文から受ける印象が違います。

 

 

 

比べてみると、

に対して」は「Aと同じではなくB」。AとBが反対のものであってもそうでなくても使うことができます。

ですが比較④のように「同時に」という意味を含む文に使うと違和感があります。

 

反面」は、「Aとは反対にB」。これはものの性質や人の行為が前件後件で反対になるときに使います。ですから比較③のように反対ではなく「ただ違い」を述べる文に使うと違和感があります。

 

一方で」は、「AとBが同時に成立している」。同時に行為・感情・事実が並列している、という文になります。

同時に、ということでN4の「食べながら勉強する」と混在しやすいですが、「ながら」は「同時に2つの動作をする」。これは置き換えできません。ですが「働きながら大学に通う」の場合は置き換えが可能です。

 

 

比較④の場合、信じている・反面/一方で・疑っている。これはどちらも成立しますが、少し受ける印象が変わります。

・信じている反面疑ってしまう。

→ほぼ同程度信じると疑うが存在する。

・信じている一方で疑ってしまう。

→基本的に信じているが、たまに疑ってしまう。

 

 

教科書によってはこの3文型が立て続けに書かれており混乱しそうですね。 

ですから、違いを求めがちな学生には「よく似ているよね、チェンジできる文もあるし、どちらも成立する文もあります。」と似ている部分は似ていると言ってしまいましょう。

 

日本語雑記 助詞「は」「が」

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初級文法 助詞「は」「が」

 

AはB

AがB

日本人でも聞かれたら困る「は」「が」の違い。

私たちも明確に使い分けてないし、日本語を研究されている先生たちが今でも議論をしています。

日本人に聞いても人によって答え方が違いますね。

ですから日本語を勉強する外国人が、知っている日本人に聞き、その個人の所感を教えられさらに混乱という場面をなんども目にしました。

 

ここでは初級日本語の助詞「は」「が」の使い分けのルールをまとめます。


比較①

ミラーさんは会社員です。

ミラーさんはやさしいです。

ミラーさんは走ります。

→「走ります」は他の2つと比べると同じではない気がします。

 

比較②

 

ミラーさんが会社員です。

ミラーさんがやさしいです。

ミラーさんが走ります。

 →どれも日常で使う表現ですが、比較①とは少し異なりますね。

 

 

比べてみると、

「AはB」の文において、Bが名詞・形容詞の場合」を使います。

対してBが動詞の場合は」を使います。

 

ですが、名詞文でも「が」を使います!動詞文でも「は」を使います!となりますね。

見てみましょう。

ミラーさんが会社員です。

ミラーさんがやさしいです。

ミラーさんは走ります。

どれもOK。ですが、これらの文は「だれが会社員ですか?」や「だれがやさしいですか?」や「ミラーさんはどうしますか?」などの質問に対して、「他の選択肢ではなくB」という意味になります。 

名詞文と形容詞文で「が」を使う場合、たくさん人がいる中でミラーさんを特定する言い方に。

動詞文で「は」を使う場合、他の人はBしないけどミラーさんはします、という他を排除する言い方になります。

 

ですから、違いを求めがちな学生には「よく似ているよね、チェンジできる文もあるし、どちらも成立する文もあります。まず初級では名詞文・形容詞文はは、動詞文はがで覚えましょう」「チェンジすると他の人じゃないです、の意味になります」と言ってみるのがいいかもしれません。

これを基本として、次の「は、は既知。が、は未知」など、少しずつ用法を足していきましょう。

N2文法 〜にもかかわらず/〜ものの

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N2文法 〜にもかかわらず/〜ものの

 

AにもかかわらずB:AなのにB

AもののB:AだけどB

よく似てますね。違いを求める学生に聞かれがちです。

比較①

◯彼は雨がふっているにもかかわらず飛び出した。

×彼は雨がふっているものの飛び出した。

→「ものの」は非常に違和感があります。雨が降っているけど飛び出した、ならややOKです。

比較②

◯試合で負けたにもかかわらず、メンバーの気持ちは晴れやかだった。

◯試合で負けたものの、メンバーの気持ちは晴れやかだった。

 →どちらも違和感がありません。

 

比較③

◯長いこと外国を勉強しているが、理解をしているにもかかわらず使えない。

◯長いこと外国を勉強しているが、理解をしているものの使えない。

→どちらも意味は通じますが文から受ける印象が違いますね。

 

比べてみると、

にもかかわらず」は「のに」に置き換え可能で「Aに関係なくB、ふつうAだったらBしないけどBで”おどろき”批難”などの感情が含まれます。

 

ものの」は、「表面的にはAなんだけど、実際は想像される様子とはちがってB」を意味しています。

 

比較③がとてもわかりやすいです。

理解をしているにもかかわらず使えない。

理解しててもしてなくても結局使えない。(批難)

 

理解をしているものの使えない。

→表面的には理解してるけど、実際は思った通りに使えない。(残念)

 

 

ですから、違いを求めがちな学生には「よく似ているよね、チェンジできる文もあるし、どちらも成立する文もあります。」と似ている部分は似ていると言ってしまいましょう。

N2文法 〜やら/〜だの/〜とか

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N2文法 〜やら/〜だの/〜とか

文法を導入すると感のいい学生は間髪入れずに「とか」と同じですよね?と聞いてきます。

同じようにN2で勉強する並列の文法「とか/やら/だの」を比べてみましょう。

 

AとかBとか:他にもたくさんある中で例をいくつかあげる

AやらBやら:他にもたくさんある中で例としてあげる。

AだのBだの:他にもたくさんある中で例としてあげる。

 

同じですが、並べてみるとちょっと違いますね。

比較①

◯日本には法隆寺とか大阪城とか歴史的な名所がたくさんある。

△日本には法隆寺やら大阪城やら歴史的な名所がたくさんある。

△日本には法隆寺だの大阪城だの歴史的な名所がたくさんある。

→「やら」「だの」間違いではないけど、なんかしっくりきませんね。

 

比較②

◯福袋の中にはジャケットとかバッグとか、とにかく色々なものが入っていた。

◯福袋の中にはジャケットやらバッグやら、とにかく色々なものが入っていた。

◯福袋の中にはジャケットだのバッグだの、とにかく色々なものが入っていた。

 →どれも使うことができそうですが、文から受ける印象が違います。

 

比較③

◯娘が結婚すると聞いて、嬉しいとか悲しいとか色々な感情が押し寄せた。

◯娘が結婚すると聞いて、嬉しいやら悲しいやら色々な感情が押し寄せた。

△娘が結婚すると聞いて、嬉しいだの悲しいだの色々な感情が押し寄せた。

→「だの」は違和感がありますね

 

比べてみると、

とか」はかんたんな並列です。「他にもあるよ」以外意味はありませんし、そこに含まれる感情もありません。

やら」も同じく並列ですが、「たくさんあってごちゃごちゃしている中のいくつか」を例としてあげています。

だの」も方向としては「やら」と同じですが、さらに感情が強く「たくさんあってごちゃごちゃしていてめんどうくさい中のいくつか」になります。

 

ですから、

「先生のお話感動しました!お母様の話だの、お子様の話だの。もっと聞きたいです!」のようなシーンで使うと大変失礼に思われるので注意しましょう。

N3 と・ば・たら・なら

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初中級文法のなかでも学生・先生ともに大いに苦しむのがこの「と・ば・たら・なら」じゃないでしょうか。

かくいう私もかなり苦しめられました。

 

「と」の用法、「ば」の用法というように「言葉→用法」で考えると収集つかなくなるので、他の先生方のブログやyoutubeなどを大いに参考にしつつ、

「この用法ならこの言葉!」でまとめてみました。

 

あくまでもこれは終わることのない「とばたらなヘブン」の入り口です。

実際は「とばたらなら」で教科書一冊できるくらい、細かくすると様々な用法があります。

そんなヘブンに飛び込むみなさんに、最低限まずこれを押さえましょうというもの。

本来なら前件後件にそれぞれ制限がありますが、

まずはヘブンの入り口として!

 

①仮定ーAssumptionー 

ば・たら・なら

 

一番わかりやすい用法で、「もし(if)」です。

AたらB/AばB/AならB

 

もしAがおこったら、B

この用法の場合、一番よく使うのは「たら」ですね。

 

宝くじが当たったら、家を買おう。 

宝くじが当たれば、家を買おう。  

宝くじが当たるなら、家を買おう。 

 

 

②結果ーResuitー 

と・ば・たら

AとB/AばB/AたらB

 

Aした結果としてBがおこった

 

窓を開けると、海が見える

窓を開ければ、海が見える

窓を開けたら、海が見える

 

この用法は、自然な結果や発見などに分けられます。

春になると、桜が咲く→自然な結果(春になった結果自然にさくら)

箱をあけると、指輪が入っていた→発見(箱を開けた結果、指輪を発見)

 

 

③習慣ーHabbitー

と・たら

AとB/AたらB

AするといつもBをする

 

シャワーを浴びたら、ビールを飲む

シャワーを浴びると、ビールを飲む。

 

この文で「なら」を使うと仮定に、「ば」を使うと結果になってしまいますね。

 

④意外ーunexpectedー

たら・と

AたらB/AとB

Aから予想していたこととは違ってBがおこった

 

家へ帰ったら、部屋が荒らされていた

家へ帰ると、部屋が荒らされていた

 

⑤未来ーFutureー 

たら

今はおこってないAがもしおこったらB

 

全部終わったら、帰ります。

 

はじめはそれぞれの言葉から覚えていました。

「たら、は仮定結果習慣意外未来。ば、は仮定結果……。

わからーーーーーん!!

 となりました。

このまとめ方なら少しはわかるかと思いやってみました。

ですが、あくまでも入り口です。

 

 

N2文法 〜まい/〜ものか

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N2文法

Aまい:もうAしない/Aしないように注意しよう。

 

Aものか:もうAしない

  

新完全マスターでは続けて出てくる文法なので、少し学生が混乱しました。

  

比較①

◯この話題については二度と言うまい

○この話題については二度と言うものか

→どちらも違和感ありません

 

比較②

○あんないい加減な話、二度と信じまい

◯あんないい加減な話、二度と信じるものか

→違和感はありませんが「ものか」のほうがしっくりきます。

 

 

 

 

比べてみると、 

「〜まい」は

自分に対する忠告や戒め(強い約束)など、強い意志を言う、という文法です。「まい」は昔の言葉で否定です、それに強い意志を表す(二度と/もう/絶対)などと仲がいいです。

 

 「ものか」は
かなり感情的に「もう絶対にAしない」。という文法です。同じように強い意志を表す(二度と/もう/絶対)などと仲がいいです。また感情表現の(あんなこんなそんな)とも仲良しです。

 

どちらも「もう〜しない」を表現する文法です。ですから、ぼったくりなどにあったときは「ものか」、自分の不注意のときは「まい」がしっくりきますね。

もう二度と親に心配はかけまい。

→親に心配はかけないと自分自身に対して。「〜ものか」を使うこともできるが、「絶対親に心配かけない」→「親を大切にする」の文なので「ものか」を使うと???になりますね。

「相談したら反対された、二度と親に相談するものか」などは違和感ありません。

サイクルリキシャでぼったくられた。二度とインドのサイクルリキシャには乗るものか。

→怒っている、もしくは興奮状態。

 

 

 

 

 

N2文法 〜うちに

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N2文法 「〜うちに」

 

❶AうちにB:Aの間にBをやってしまおう、Aがすぎるとできなくなるから。

❷AうちにB:Aの間に変化Bがおきる。

 

特に意味❶はN3文法の「〜間に」との違いの質問が集中しました。

(使用教科書が新完全マスターで、この文法は2課なんですね。まだ授業やクラスの雰囲気になれていないので、学生も教師も「ほとんど同じなんだよー」を発する受け入れるが難しい時期でした)

 

比較①

△母が出かけている間に、ケーキを食べてしまおう

◯母が出かけているうちに、ケーキを食べてしまおう。

→「間に」は少し収まりが悪い気がします

 

比較②

◯16時から17時の間にお電話差し上げます。

✖️16時から17時のうちにお電話差し上げます。

→「うちに」はとっても違和感があります。

 

比較③

△午後は会議があるので、午前中の間にこの仕事をやってしまってください。

◯午後は会議があるので、午前中のうちにこの仕事をやってしまってください。

→「間に」は違和感があります。

 

まとめると、

「うちに」は、あとからはできなくなるのでチャンスは今!という意味があります。

ですから比較①③のような文は後件に違和感がなく、比較②では後件に違和感を感じます。

また前件ですが、明確に時間を区切ることができる言葉がくると「うちに」は違和感があります。比較②は始まりと終わりが明確ですね。

「うちに」はAの期間を示しながらも、言葉として区切りを表現できない場合に使うことができます。

日本語雑記 JLPTについてー採点方法・尺度得点編

 

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先の目的編でJLPTではなにを図るのか、とても簡単にまとめました。

 

もう1つ、セミナーで聞いた尺度得点について。

細かいことはJLPTのウェブサイトにも掲載されていますが、かなり難しく表記されているので、

ざっくり中のざっくりをまとめました。→本物はこちら

(そういえば検定の勉強で素点がどうとかやった気がしますが、採点方法の章は完全に捨ててましたのでほとんど覚えていません)

 

 

尺度得点とは?

 

通常のテストでは正答数×点数=得点→合否判定です。

 

こんなかんじ。

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JLPTの尺度得点はItem Rreponse Theoryといって、TOEFLなどでも採用されています。

このIRTでは正答数ではなく、どの問題に正解したか、で得点が決まります。

 

さっきの3人の得点をくわしく見てみましょう。

 

正答数の内訳

ここではざっくりわかりやすく「簡単な問題」「普通の問題」「難しい問題」としていますが、実際は統計から導かれるもので単純な難易度ではありません

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通常の採点では1番のアーカーさんです。

彼は簡単な問題と普通の問題に多く正解していますが、難しい問題はあまり正解していません。

この場合尺度得点で採点すると、アーカーさんは通常採点より得点が低く判定されます。

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ミラーさんは簡単な問題と難しい問題と多く正解しています。

この場合の得点は通常採点より高く判定される可能性があります。

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最後のゾマトさんですが、正答数は一番低いです。ですが彼は難しい問題の正答数が一番多いです。この場合、逆転までは及ばなくても得点は二人に追いつくかもしれません。

 

その結果

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このように、正答数が2番目だったミラーさんの得点が一番高くなり、ゾマトさんの得点も正答数ほどの差がなくなりました。

 

つまり、簡単な問題をたくさん正解してもあまり得点が伸びないことがあるのです。

反対に正答数が少なくても難しい問題に正解が多くあれば得点は伸びることがあります。

たまに1問正解していて得点がゼロ、1問不正解があるのに得点が100など不思議なことがあるようですが、これは尺度得点により判定されているからなのです。

 

どの問題がハイスコア?

当然セミナーでも出た質問です(笑)

セミナーの先生も「これがわかれば神です」とおっしゃっていました。

なぜならどの問題がハイスコアなのかはJLPTが終わってから、受験者の回答パターンを統計化、そこから作れる数理モデルによって判定がされるのです(ざっくり)。

みんながテストを受けてからでないと、わからないのです。

 

ですが先生から一言。

「問題作りのセオリーとして、問題が進むにつれて簡単から難しくなっていくように作っています。これは最後まで問題とといてほしいからです」と。

 

得意な問題で点を稼ぐとか、そういったことでは合格できないようになっているんですね。

せっかくなので私も質問しました。

よく学生が「あと2点で合格でした」と言っているけど、これは単純にあと2点の問題を1問正解すれば合格とか、そういうものではないってことでいいですか?

先生のお答え「それはもう尺度得点ではまったくわかりません」。

ですからあと1点2点だった学生には

「そういうもんじゃないからあと20点とるつもりでがんばれ」と言おうと思います:)

日本語雑記 JLPTについてー目的編

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日本語教育業界において外すことのできないもの、それはJLPT。

日本語能力検定試験

その目的はいわずと知れた、日本語のスキルを図るためのテストです。

 

もうJLPTと言えば黄門様の印籠みたいなもの。

その効力は日本のみならず海外にも轟いています。

 

ではどの程度、JLPTについて知っていますか?

年に2回、5つのレベル、文字語彙・文法・読解・聴解………あとは?

 

ちょうどよくJLPTセミナーがあったので、そこで聞いた話を2つに絞ってまとめてみました。

 

なにをはかるのか

 

教師の間では聞き飽きた・言い飽きたセリフです。

「N1とってるのに、全っ然しゃべれないよね」

わたしもさんざん言いました。

 

でもそれはそうなのです。

なぜなら、本来JLPTにおいて「話す力」はそもそもはかられてないのです

 

JLPTの目的はは

・ことばの知識(文字・語彙・文法)

・読む力

・聴く力

この3つの脳能力をはかることです。

ですから、極端なことを言うと知識があれば会話0でも合格するのです。

 

じゃあ話す力は?

 

話す力と書く力、そして聞く力・読む力の4技能をはかることができるのはJFS、国際交流基金のJFスタンダードです。これは「日本語でなにがどれだけできるか」というもの。A1・A2・B1・B2・C1・C2(易→難)の6段階で判定されます。

詳しくはこちら

 

よくある質問らしいのが、

「JLPTのN3はJFスタンダードのB2ですか?」とのこと。

答えることはできない、と言っていました。

だってはかっているものが違うんですから。

 

例えるなら、空手と相撲どっちが強いですか、と同じくらいなんとも答えらえれない質問なのです。

 

 

N3合格者がJFスタンダードに挑戦した場合、合格する人もいるし不合格の人も出るわけです。

反対にJFスタンダードB2の認定があっても、N3に合格しない人もいるのです。

 

ですがセミナーの先生がおっしゃってたのは、

「そちらかのレベルがあがれば、もう片方のレベルも引き上がる」。

 

自然なことですね。

 

ですからお互い補完しあうような授業をすることが大切であると、結局教師次第ということを思い知らされたわけです。

 

ちなみにJFスタンダードは「このレベルでは何ができる」がわかりやすく明示されています。

今回JLPTもcan DOリストを改定し年内にウェブサイトに載せるとのこと。

これが聞いて結構驚きました。

こちらが期待しているより課題遂行のレベルが結構低いんです。

 

例えばN3、読む力では「図やグラフなどの助けがあれば簡単な広告などを読むことができる」、聴く力では「敬語やくだけた表現を聞き取ることができる」です。

N3の能力はもっと高いと思っていただけに驚きましたが、妙に納得も。

 

ですから「N3とったら仕事できる」神話は、ちょっと難しくなりますね。

 

 

 

日本語雑記 にほんごなぞなぞ

単調になりがちな中級の授業でたまにやっていた日本語なぞなぞ。

 

そのうちいくつかを紹介します。

 

①中に隠れているよシリーズ

・冷蔵庫の中に動物がいます。何でしょうか。→れいぞう

・帽子の中に動物がいます。何でしょうか。→ぼうし

・先生の真ん中にいる動物は?→きょうし

・家の間にあるものは?→「う」あいえお(はじめは、うち、と読むのがポイント)

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②チェンジしてみようシリーズ

・たちつみと。これはなに?→になっている。手紙。

・さつすせそ。これはいつ?→になっている。四月。

・あいうおお、が素敵ですね!なに?→になっている。笑顔

 

 

③足してみようシリーズ

・丸をつけるとお父さんになります。だれ?→お母さん(はは→ぱぱ→パパ)

 ・あいうえお。丸をつけると動物になるものは?→「あ」あに丸=アニマル

・真っ黒なのに点を2つつけると透明になります。なに?→カラス(ラス)

 

④その他シリーズ

・1日に2回あるのに、1年に1回しかないものは?→「ち」い・いねん

・日本語は日本のことば。じゃあ「英語」は?→日本語。

・おじいさんとするスポーツは?→ソフトボール(祖父とボール)

 

なぞなぞのようなクイズに慣れていない学生にとっては最初は「????」ですが、文法や語彙知識がなくても解けるとわかると皆前のめりに。

 

クラスのレベルとしては中級向けです。日本の小学生向けのクイズがちょうどいいくらい。意外と漢字や文法が上手な真面目な学生はクイズが苦手で、成績はともかく「かしこいなー」と思う学生は柔軟に答えていました。

結構わかりやすく悔しがったり、授業中うんともすんとも言わない学生がポツリと答えたり。

ただし大騒ぎになることもあるので程々でお試しください(ノ∀`)

 

辞書をひく と いうこと

いまだに紙の辞書を引いている。

学生や現地の先生、そういえば日本でも同じ学校の先生に言われた。

 

「それ辞書ですか?辞書ひいてるんですか?」

 

たぶんスマホでいくらでも早く簡単に、なんなら発音まで教えてくれるのに、

なぜわざわざ時間がかかる辞書なんか、

と思われている。

 

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とっさの時はもちろん辞書アプリを使う。便利だし、単語ではなく文としてフレーズとして変換してくれる。

 

便利。とても便利。

 

じゃあ何故、辞書を引くのか。

 

それは、辞書には発行に携わった人たちの責任があるから。

 

私の前職は印刷関係で、それが大きく関わっている。

 

巻末の奥付には発行年月日、編集組織、編集責任者、印刷会社の名前が載っている。

それは「この日に私たちの責任でこの本を発行しました」という証。

一度印刷したものは、形を変えずに・気付かれずに訂正することはできない。

間違いがあった場合、訂正シールや正誤表などいくつか対処法はあるが「ここに間違いがあった」とわかるものが多い。

ウェブサイトのように、知らない間に訂正作業がなされていることは絶対ない。

 

だから編集する人たちはもう嫌というほど内容を確認する。

校正という確認訂正作業をなんども何度も繰り返し、「印刷してOK」となると原稿にサインをして印刷会社に渡す。

 

「あーーーー!サインした!もう見れば見るだけ訂正箇所がでるから、もう見ない!印刷してください!!」と言いながらサインする編集担当の方を何人も見てきた。

 

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右下が校了のサイン(別サイトより拝借)

 

原稿が社に持ち帰えられると、最終確認の部署が原稿をチェックする。

そこでOKがでると印刷へと進められる。次に進むと、ほとんどの場合で変更はできない。

そこの部長や次長がドアの隙間からこちらを覗き、「行くでー。もう次行くでー」と言いながら原稿ファイルを印刷の部署へ持っていくのを何度も見てきた。

 

印刷するときの汚れをチェックする係の人が、汚れではなく誤字を見つけたとき。

印刷の課長や係長が「俺たちの仕事やないけど、見つけてしまったから。お客さんに連絡してあげや」とめんどくさそうに言いに来てくれたことが何度もあった。

それをお客さんに連絡すると、まるで病気かなんかを助けたかのようなお礼を言っていただいた。

 

そうやって、たくさんの人たちの責任が1冊の本を作っている。

その本は、教える仕事にとっては欠かすことができない武器のようなもの。

だから私は教える時に必要な言葉は辞書を引く。

前職で見てきたことが、いま私の仕事の盾となり矛となっている。

N2文法 〜あげく/〜末に

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N2文法

AあげくB:苦労してAしたのに、最後は残念にもB

 

A末にB :時間をかけてAしたけど最後はB

  

新完全マスターでは続けて出てくる文法なので、少し学生が混乱しました。

  

比較①

◯散々迷ったあげく、なにも買わずに帰った

○散々迷った末、なにも買わずに帰った

→どちらも違和感ありません

 

比較②

○4ヶ月も船便を待ったあげく、税金を払わなければならないことになった。

△4ヶ月も船便を待った末に、税金を払わなければならいことになった。

→違和感はありませんが「あげく」のほうがしっくりきます。

 

比較③

△いろいろな仕事をしたあげく、日本語の先生になった。

◯いろいろな仕事をした末、日本語の先生になった。

→どちらもおかしくないですが、文から受ける印象が違いますね。

 

 

比べてみると、 

「〜あげく」は

Aで大変な思い・たくさんの手間をかけた のに 残念な結果(B)になった。という文法です。長い時間や手間を表す(さんざん/いろいろ/たくさん)などと仲がいいです。

 

 「〜末(に)」は
A大変な思い・たくさんの手間や時間をかけたあと最後にBという結果になった。という文法です。「〜あげくに」とちがって残念な結果が必要というわけではありません。同じように長い時間や手間を表す(さんざん/いろいろ/たくさん)と仲がいいです。

 

どちらも結果を表現する文法です。

いろいろな仕事をしたあげく、日本語の先生になった。

→たくさんの種類の仕事をしたあと、本当はなりたくなかったけど日本語の先生になった。

いろいろな仕事をした末、日本語の先生になった。

→最後は日本語の先生に納まりました。

 

あげく→末に、の置き換えは可能です。

が、末に→あげく、の置き換えは元々の文にはない「残念」や「不本意」というネガティヴな感情を足してしまうので文の意味が変わってしまいます。

 

上級文法は置き換え可能なものが多いですが、感情が変わってしまうものは注意が必要です。