日本語教師という仕事。
2019年の入管法改正にともない注目されるようになった職業「日本語教師」。
日本語教師、どんな仕事だと思いますか?
そうです。
日本語を教える仕事です。
それ以上でもそれ以下でもありません。
私たちが教えるのは普遍的な言葉のルールです。
意識せず使ってる私たちの国語を教えるのではありません。
日本で教えていたとき、この職業を言うと二言目には
「すごーい。じゃあ英語かなりできるんですねー」
海外に住んでいる今、この職業を言うと二言目には
「へー。じゃ日本にいたときは何やってたの?」
はじめのうちはこの質問になんの違和感もなかったけど、海外に来て違和感が鮮明になりました。
英語使いませんよ、全部日本語で教えてます。
と答えると
「へー…そうなんだー…。」
穿った見方ですが、その…にあるのは
「じゃあ誰でもできるじゃん」。
日本にいた時から教えてますよ。なんなら検定も合格してますし。
と答えると
「あ…、それは失礼しました」
穿った見方ですが、失礼しました、の意味は
「海外住みたい奴が選ぶ簡単な仕事でしょ、日本語教師って」。
日本における日本語教師のイメージはこれです。
英語が必要。そうじゃないなら誰でもできるよね。
海外住みたい奴が日本人ってのを最大限活かせる仕事。
実際はどうでしょう。
誰でもできる仕事=この如何様にも消え去らないイメージのおかげで、日本語教師の賃金はとても低いです。
1コマ45分@1,800×4コマ=7,200円(あくまで平均です)
これが1回の授業の給料です。
え!45分1,800円てめっちゃ高いじゃん!!
って思います?
4コマの授業をするのにどれだけの準備が必要でしょうか。
これは学校・担当科目・以前やった経験などで大きく変わりますが。
私は1年目は準備に毎回18時間かかりました。
ですから実質労働時間で考えてみると、
1コマ45分@1,800×4コマ=7,200円
→7,200円÷(授業3時間+準備18時間)=342円/時
もう搾取レベル!
慣れてきたら短くなるでしょ?って言いたいと思いますけど、一度やった授業が半年後や一年後に回ってくるのは奇跡だし、3年は準備し続けなければならないのです。
しかも非常勤掛け持ちだと学校によってアナログやデジタルと方針が違うので一様ではありません。
(私が1年目で行ってた学校は、A校は4コマ分のスライド準備が必要。B校は授業1週間前に教案提出が義務。C校は野放し。)
当たり前ですが授業準備をしなければならないので、他のバイトも必然的に減っていきます。
また学校行事や夏休み・テストなどで非常勤の出勤が不要の場合、給料はありません。コマ給ですから。
そして非常勤の場合、専任と違って学生と接するのは週に1回ですから皆さんが想像するようなスクールウォーズ的な感動話もありません。
………じゃあ、なんでこの仕事やってんの?
この答えがわからなくなって辞めていった先人たちがたくさんいたと聞いています。
私の場合、日本語教師になったキッカケは不純なものでした(これ本当)。
今ではのそ当初の目的を失っていますが、この仕事を続けています。
ある先人が教えてくれました。
「彼らは日本語を武器にしてお金を稼ぎたいんだよ。この仕事は武器を渡して使い方を教える仕事。それだけ」
「日本語で仕事ができる人を作る。これは貧困を助けることに、大きく見れば繋がるんだ」
稼げる人を作る。生々しいけどこれはシンプル。
そのための日本語。それ以上でもそれ以下でもありません。
目的をたくさん持ってしまうと、得てして見失いがち。わたしの今の目的はこの単純すぎる一つだけです。
でも現状の日本語教師の待遇では私たちが稼げへんがな、と思ってしまいますが。
クラスに1人でも真剣にノートをとる学生がいたり、「あ、わかった」という瞬間の顔をみると、もう少し続けようと思ってしまうものなのです。
今は南アジアににいるので特に思います。
この学生が日本語で仕事ができるようになって、生活できるようになったら。この子の人生は変わる。
一人でも二人でも彼らの人生が変わる手伝いができるなら、この仕事も悪くない、安いけど。
そういう思いを持って仕事ができるのも悪くない、安いけど。
そんな思いで道をつけてくれた先人たちのあとを、私は歩いているのです。